私に恋を教えてくれてありがとう【下】




……金井 金井…………。




電気スタンドの明かりをつけ

机の上に置かれた予約カルテの一番上、

“金井竜太”のカルテを開いた。





確かに採血予定がある。



……カルテの表にメモが貼ってある。





超音波後は検査結果を聞くために、

牧田先生が検査を終えるまで待つそうだ。






……と、言うことはまた自分がその介助につかなければならないことを察した。




……カルテの内容に何も異常なところはない。





華子は息を前髪に吹きつけた。



「よしっ」


気にしていても仕方がない。

これは仕事なのだ。




こちらが気丈にしていれば何の問題もないはず。




そう言い聞かせ、強張った手で金井の採血伝票を持ち

職員のみ通ることの出来る通路から

採血室へ伝票を届けに行った。
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