私に恋を教えてくれてありがとう【下】
超音波の機械に患者の情報を入れ
タオルを補充し、カーテンを引き
部屋の中で待機していると
息を上げた牧田が入ってきた。
「待ちました?」
「いいえ、先生
コールしたのはついさっきですよ」
華子はにやっとした。
牧田は180の身長の持ち主で見たところ傲然と
した成りだが、
中身は違いそうだ。
中身といっても性格のことだ。
実際“白衣の下の中身”は
偉そうな日々の食事のせいで威張っている様だ。
この身長差からでも牧田の下膨れた輪郭がわかり、
そしてこんなに暗くした部屋の中でも
硬そうな髪の毛の一本一本が銀色に
はっきり見えたことで
50歳は過ぎているな……と確信した。
牧田は華子が自分をしげしげ見ているのに気付き
華子の両頬を 大きな片手でくわえた。