私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は張り付いた足をゆっくり剥がし


牧田の行く先を目で追った。






牧田は傘を持った誰かの腕を掴んでいるが





相手は公園のけやきの幹のせいで隠れてしまっている。








声はかすかに聞こえてくる……







向こうまで50メートルはあるのではないだろうか






そこからここまで聞こえるということは






大分剣幕なのではないだろうか……。








華子は幹を視界から除けるのに



ほんの少しカニ歩きし、目を細めて見た。








黒いスーツ




ここからでもわかる広くまるまるとした額




その上に乗った岩のりのような髪の小男








金井だ。








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