私に恋を教えてくれてありがとう【下】
そういえば自分の後を歩いていた人間は


どこに行ったのだろう。





追い越されたわけでもないのに消えている。





……金井に後をつけられていた?……




突然今まではっきり見えていた公園がぼやけ


ぐらりと揺れ




雨は華子の頬をつたい





茫然とその場に立ちつくしていると



遠くから金井のものとは思えない



酷く憤慨した声が20歳の女へと投げられた。




「こ!!この男はな!!

 あんたを毎日つけていたんだ!!


 わたしはあなたを守っていたのだ!


 ……やめろ!放せ!!


 ……!!!!!!!!!!」




ぼやけて映る灰色の大男は


獲物を捕らえそこなったねずみの胸倉を


軽くつまみ上げているかのように掴んだ。




すると小男は怯まず憤懣とした態度で


なんとか大男から逃げおおせ




びしっと指差し狙いを定め




「投書してやる!!」




と、牧田に毒矢を放った。



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