蒼い月の雫
その時姫は遠吠えしたのだろう.
が,あまりにも幻想的過ぎて,あまりにも美しすぎて狼はその姿に虜になり聞こえなかった.


そして,こちらを向いた姫の眼は狼のソレのように金色に輝いていた.

「いくよ」


静かに呟くと同時に姫の体が何倍も膨れ上がった気がした.


「姫・・・ちゃん?」


そこには翼を持った巨大な銀色のオオカミがいた.
ベランダの柵に鳥のように後ろ足で掴まり,静かにこちらを見ていた.


『怖がらないのね.やっぱりお兄ちゃんの選んだ人』


姫はクルリと狼に背を向けると乗るように促した.


「フワフワ・・・」

翼の間に乗ると,姫はすぐに真っ白な翼を羽ばたかせ夜空に飛び出した.

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