年上女ですが…それが何か???






ひとしきり私をクスクスと笑った後、コータ君はおもむろに顔の向きを変えた。





「えっとさ… 多分、いや絶対知ってると思うけど……」






足と足をピッタリくっつけた状態で怖ず怖ずと話しだしたその横顔を見つめると、何度も睫毛を上下させて話すのを躊躇してるのが分かる。





ここまでして聞き出そうとしてる私って、かなりヤな奴かも……






そう思い直して、一瞬、話したくなければもういいよって声に出しかけたけれど、






「“Shu-Li”ってブランドあるじゃん……」






私が一番思い入れのあるブランドの名前がなぜか出てきて、ついつい頷くだけになってしまった。






“Shu-Li”といえば、アメリカの有名な服飾系ブランドなんだけれど、そこは私がモデルとしてショーに出た唯一の海外ブランドでもある。





日本で開催される海外ブランドのファッションショー日本人枠には、たいてい事務所が勝手に応募していたけれど、ショーに出場するには164センチと低い私は、いつも書類選考の時点で落とされていた。
なのに“Shu-Li”だけは、こんな私を起用してくれた。





だから思い入れが一番強いし、なによりその創設者でありデザイナーの朱里さんにはかなり強い憧れを持っていたりする。





というのも、彼女は元々私と同じ雑誌モデル出身者で、その類まれなき美貌と日本人離れした体系で、世界のトップモデルにまでなった人だから。






『モデル業界に知らない人はいない』と言われる程の伝説の人なんだよね。







………って、なんでここで“Shu-Li”の名前が……?





不思議に思ってコータ君の顔を覗きこむと、何かを決意したように下唇をぎゅっと噛みしめたコータ君が、やっと聞き取れるほどの小さな声でぽつりと漏らした。






「そこのデザイナーというか、社長が……俺の母親、なんだよね……」







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