年上女ですが…それが何か???
案の定と言うべきか−−−私は今、鍵をさして自分家の玄関を開けているコータ君の後ろに立っている。
ふと表札を見ると、そこには“Tukishima”の文字。
そういや昨日は、フルネームを聞くことさえ出来てなかったんだっけ……?
「どうぞ」
その声に視線を戻すと、開いた扉の向こうに一昨日私が見たままの景色が広がっていた。
やっぱ贅沢……
間取りは2LDKなんだけど、その一つ一つがやたら広い。
金持ちボンボンの大学生としても違和感を感じたのに、実は高校生だと知った今は、それがさらに異様に感じて、私はつい思ったことを口にした。
「本当に一人暮らしなの?」
するとコータ君は器用に後ろ手にロックしながら、私の背中をそっと押した。
「うん、そうだよ。だから気兼ねなく上がって」
「……あ…うん。
お、おじゃまします…」
私が一日ぶりにその空間に足を踏み入れ、それに続いてコータ君もスニーカーを脱ぐ。
「お茶とコーヒーと紅茶、どれがいい?」
リビングに入った途端、そう言ってコータ君はカウンターキッチンの方へと向きを変えた。
「……じゃあ、冷たいお茶」
「了解。温めるからお弁当どれがいいか選んでよ」
今にも崩れそうな状態でカウンターに置いた荷物を一瞥して、コータ君は私に背中を向けた。
その手際の良さに、ここによく人を招き入れてるんだな、と勝手に想像して、なぜか胸の奥にチリッと痛みを感じた。
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