リアルな秘めゴト



今日の朝倉さんはどうしたのだろうか、と疑ってしまう程の豹変ぶりに、あたしはただオロオロする事しか出来ない。


朝倉さんは無表情で無愛想、この言葉がお似合いの冷血担当者という事で有名。


過去担当した他のマンガ家さんは、あまりの冷血ぶりに逃走した人が何人も居るんだとか。



そんな朝倉さんが。

そんな朝倉さんがっ…!!



口元を緩め、ニヤリと笑い、あたしの耳元で言葉を囁いているなんて、どこの誰が想像しているのだろうか。




「という訳で、プロットの締め切りはあさってに延ばしますから。その間に、今日のこのドキドキを忘れる事のないように、仕事頑張って下さいね?」




そう言い残すと、朝倉さんは静かに部屋を出て行った。



―――初めて、朝倉さんにトキめいてしまった。


でも…あたしのスランプを助けようとしてやってくれている事…だよね?というか、絶対そうだ!


あたしは朝倉さんへのトキメキを即座に仕事面で生かそうと、ルーズリーフとペンを取り出し、スラスラとペンを動かし始めた。




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