ティアラ2
「ていうか、そっとしておくも何も、連絡すらとれないし……」
「とろうと思えばとれるでしょ。あんたたちは家だって近いんだし、バイト先に行くことだってできるじゃない。……でも、いまはやめといたほうがいい」

直子が出した選択肢は、昨日まであたしの頭の中にあったものだった。けれど、また避けられるんじゃないかと考えたら……怖くて、行動には移せなかったの。

「深町は多分、その笹野さん……だっけ? その子のことを好きになったんじゃないと思う。……喧嘩ばかり続くと疲れちゃうし、合わないのかなって悪いほうに考えたんじゃないかな?」
「…………」
「いま行っても、また喧嘩になるだろうし……少し時間を置いてからのほうがいいかと」

太一から返事がきたのだろう。直子は喋りながら、震える携帯電話に手を伸ばす。
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