ルージュの森の魔女
「だってお腹空くんだもの…」

「お前の胃はブラックホールかっ!!…うぅ…ちくしょう……せっかく稼いだ金で新発売のすべすべ毛艶セット買おうと思ったのにぃー……」

すっかり塞ぎ込んでしまったクロードにアリーナはどうしたらいいものかとため息をついた。

しかし、不意に感じた気配にアリーナの瞳が鋭く光る。



「……どうした?アリーナ……?」


主人の纏う雰囲気が瞬時に変わったことに気づいたクロードはさっと伏せていた面を上げた。


「…どうやら、お客が来たようね。……クロード」


先ほどとはうって変わって別人のようになったアリーナに、クロードも頭を垂れ、次の言葉を待つ。


「客人を案内してあげなさい」

その命に、クロードは「御意」と返事をすると一瞬で姿を消し去った。


「何か…嫌な予感がするわ……」

呟く声は誰に聞かれることもなく薄暗い部屋に溶け込む。
アリーナは使い魔が消えた後も視線を逸らさず、濃い霧がかかった森を見つめ続けた。
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