ルージュの森の魔女
30分くらい経っただろうか……
ひたすら歩き続けると初めに感じた違和感が先ほどよりも強く感じとれるようになっていった。
元凶はもうすぐそこだと三人とも確信する。
少し歩くと、『それ』は三人の行く手を阻むように忽然と姿を現した。
目の前に現れたそれに、若草色の髪の青年は感嘆の溜め息を漏らす。
「我々だから視ることができますが、これが一般人…いやそれなり腕を持った魔術師であっても視ることはもちろん通ることも出来ないでしょうね……」
青年の言う通り、目の前にある結界は幾重にも重なりただ結界を破る呪文を唱えただけでは、破れないような仕組みになっていた。
その手前でさっきからずっと黙って成り行きを見ていた金髪の青年がおもむろに手をかざす。
青年は透き通るような美声で呪文を唱えると手の先が蒼白く光り、そこに丸い円盤のような紋章が浮かび上がった。
「…やはりな。この結界は闇の魔術でできている」
「…っな!闇の魔術だと!?」
青年の言葉に隣にいた驚いたように赤髪の青年は声を荒げた。
闇の魔術は光の魔術と同じぐらい希少価値が高いことから、国でもその属性を持った者は戦で役に立つため重要視される。
しかし、その反面、強力な力と扱いが難しいことから強靭なる精神力を持っていないと簡単に闇の魔力に身体を乗っ取られてしまうのだ。結果、そういった者たちは謀反や殺戮と行った愚行に堕ちてしまうのである……。
ちなみに、術をまともに扱えた人物は今まで生きて来た中で一人もいなかった。過去の歴史を見てもほとんどいないだろう。
……それなのに、この魔女は簡単に術を操れている。
改めて思い知らされた魔女の実力に、赤髪の青年は鳥肌がたつような寒気を感じた。