ルージュの森の魔女

重い空気が辺りに漂うなか、低いテノールの美声が空気を切り裂く。

「闇の魔術と相対できるのは光の魔術のみ…。ルイス、ジン…後ろに下がっていろ」

命を下された二人の青年は素直に後ろに引き下がる。金髪の青年はそれを背中で感じとると、両手を前につきだし長剣を水平に下ろした。

「…光の守護神ルキウスよ、我はそなたの力を望む者なり。誰よりも黄金に輝く御力により目の前の闇を討ち滅ぼしたまえ。―――エターナル・ブレス!!」

瞬間、円を描くように青年の足元から無数の金色の光が放たれた。
それらは渦を描くように廻ると青年の持つ長剣へと吸い込まれていく。

金色の剣に変貌したそれを青年はすっと目の前で構えると次の瞬間、一気に剣を降り下ろした。


「やあああぁぁ!!!」

掛け声とともに剣から放たれた光の刃が結界にぶち当たる。すると、ビリビリビリという衝撃音とともに辺りに雷電がほとばしった。それを避けるように三人は腕で顔を隠すと、見事に斜めに切り裂かれた結界は眩い閃光を放ちながら徐々に消え失せていく。

最後には跡形もなく無くなり、そこには暗闇へと続く細い山道が存在していた。



「…さすが、隊長ですね」
「……あぁ…ハンパねぇな」



誉め言葉なのか何なのかわからない部下の呟きに青年はプラチナブランドの髪をかきあげながら、冷たい目付きで睨み据える。

「下らないことを抜かしてないで早く行くぞ…」

そう言って、さっさと先を歩く青年に、二人は内心ほくそ笑みながら後をついて行くのだった。


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