ルージュの森の魔女

「…おい、ずいぶんと静かだなぁ。この森は…」

結界を破って入ったのはいいものの、あまりの静けさに赤髪の青年は軽く身震いをした。
それを見て、若草色の髪の青年は軽く溜め息をつく。
「初めやる気マンマンだったのは何処のどなたですか?こういうときこそ緊張しないと、魔物に襲われた時命取りになりますよ。……まぁ、貴方の場合死ぬことはないと思いますが……」

「……おい、それは馬鹿にしてんのか…?―――ーッッ!!?―――」


青年の辛辣な嫌味に赤髪の青年は呆れ口調で言い返す。
すると、突如感じた何かの気配に思わず口を紡いだ……。



……背中に感じる無数の殺気。
それは全て魔物の気配だった。

「…気を付けろ。囲まれている」


緊迫な声音に周りを見渡して見れば暗闇にいくつもの金眼が浮かんでいる。
それらは『……ゥゥウ…』と低い唸り声を上げながら、ジリジリと近付いて来ていた。


「…来るぞっ!!」

金髪の青年の掛け声とともに、藪から数十匹の狼の姿をした魔物が飛び出す。
大きさは普通の狼よりも数倍大きく、牙は鋭く尖っていた。

三人はそれぞれの武器を構え、同時に斬りかかる。

「おりやぁぁ!!」


まず初めに赤髪の青年が大剣を持ち上げ、跳躍した。

ザシュッという音とともに魔物を切り裂くと、剣に斬られた数匹の魔物がまるで煙のように消え去る。

「なんだこりゃ!?…フツーの魔物じゃねぇ!」

青年の言葉に若草色の髪の青年が答えた。

「これは恐らく幻影でしょう!…ジン、レイ、ここは私に任せてください!」


そう言うと青年は長剣を地に刺し、呪文を唱える。
「風の守護神フレイノーンよ、我は汝の力を望む者なり。何者にも縛られない神風の御力により全てのあやかしを消し去りたまえ……エレメンタル・ブレイズ――!!」


次の瞬間、青年たちの周りに風の渦が巻き起こり、凄まじい突風となって魔物たちを巻き込んだ。
< 19 / 54 >

この作品をシェア

pagetop