ルージュの森の魔女
全ての魔物たちを飲み込んだ巨大な竜巻は周りの木々をも巻き込み、天空に吸い込まれるように消えていく……。

魔物たちとともに半径5メートルの木々まで綺麗に消し去った張本人は細い顎を掴み、一言呟いた。

「……ふむ。少しやり過ぎましたかね…?」

「少しどころじゃねぇだろ!!こんな狭いところで最上魔法使うなっ!」

間髪入れずに、赤髪の青年が突っ込む。

そのやり取りを金髪の青年は呆れた様子で見ていると背後にもう一つの気配があることに感づいた。

「誰だ!そこに入るのは!」

青年の鋭い言葉に後の二人も気配がする方を鋭く睨み付ける。

そこには、先ほどの魔物とは違う金色の相鉾がこちらの様子を見ていた。

「…ほう。あの幻影を消すとは、さすが主の結界を破っただけのことはあるな」
フッと笑ったように見えるそれは、暗闇の中から月明かりの下へすっと姿を現す。

それは、人語を話す一匹の黒猫だった。

「お前か……、あの幻影を差し向けたのは……」

金髪の青年の言葉に黒猫――クロードは丸い金眼を細める。

「左様…。主の使い魔である我輩にできないことはない。…なに、ちょっとしたテストをしただけだ。その様な恐い顔をするでない」
クロードの笑いを滲ませた言葉に金髪の青年は更に眉間を険しくする。

「貴様の主はルージュの森に棲むと言われる魔女か…?」

「…そうだ。主はお前たちが来ることを知っている。我輩の後をついて来い。案内しよう」

そう言うと、黒猫はくるりと三人に背を向け、道なき道を歩き始める。
三人は魔女が自分達に会おうとしていることに些か驚きながらも、意を決し、黒猫の後をついて行った……。



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