【短】この猫知りませんか?
−−−キーンコーン、カーンコーン−−
「ふぅー、もうおしまいかぁ。・・・よし」
私が名残惜しく、屋上を後にしようとしてるのに、この人はまだフェンスに肘をついて、もう一本煙草を吸おうとしている。
「授業始まっちゃいますよ」
「・・・」
私の言葉など、全く無視した。
「・・・私っ、白江桃子と言います。白いに江戸の江。下は、そのまま食べる桃に子供の子です。・・・それじゃ、行きますね」
私は名前の自己紹介だけして、今度こそ屋上を後にした。
やっぱりその男は、何も喋らず黙ったままだった。