飛べない鳥
俺は綺麗にした食器を泡がないように水で流し、
食器棚に置いていく。



全ての食器を洗い終え、
美咲の方へと向かって行った。



『…ありがとな』



『作って良かった!』



『あぁ…』



『また…作りに来てもいい?』



美咲の大きな瞳が、
俺を真っ直ぐに見る。


美咲の目に、俺が写っていた。



そしてゆっくり美咲が俺に近付いてくる。



だんだん閉じていく美咲の瞳。


近付く美咲の唇。



俺はすぐに察知した。



…キスされる。



俺は顔を横に向け、
キスをされないようにした。



『何でぇ??』


美咲は残念な顔をする。



『俺は軽い男じゃねぇし、美咲は彼女でもねぇだろ?』



『じゃあ彼女になってあげる!』




『…無理』



更に美咲の顔が暗くなる。


もし、これが唯だったなら、俺は迷わず目を閉じて唯のキスを受け入れていただろうか?



きっと、俺は目を閉じていただろう──………
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