飛べない鳥
雨は俺達を容赦なく濡らしていく。


駅に着いたころは、
お互い全身びしょ濡れだった。


ぽたぽたと髪の毛から雫が落ちてくる。



ワックスで整えた髪がぺたんこになっている。


俺は髪の毛を掻きあげた。

『うっぜぇ…』



『今の遥斗かっこよかったぞ?惚れる勢いだし』



響は手を叩いて笑っていた。


いつもかっこよくセットされている響の髪型は、
今はいつもより幼く見える髪型になっていた。



その響を見て俺は吹き出しそうになった。



『…んだそれ、キモい』



『うるせぇって!』


響は必死に髪型を直すが、一向に直らない。


『ははっ…』



必死に直す響の顔がおかしくて、ついに俺は声を出して笑ってしまった。



『遥斗…お前…』



『あ?』



何かに驚いた顔をしている響。


俺には訳が分からなかった。



『お前…笑ってんじゃん…』
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