飛べない鳥
美咲はずっと黙ったままで、黙々と体や髪の毛を拭いていた。



俺は美咲が喋り出すのを待っていた。



俺のレモンティーがなくなる頃、美咲が口を開けた。


『…ありがとう…ごめんね?』


その声は、いつもの美咲の元気な声ではなく、
声がなくなってしまいそうなくらい、弱々しい声だった。



『いいって…つかどした?』



俺は立ち上がり、冷えたレモンティーをコップに注いでいく。



『あの女の子は誰?』



『あの女の子って?』



俺はコップを持ち、さっきと同じ場所に座った。



外はまだ大雨だ。



『朝、屋上にいた子…』


美咲のこの言葉を聞いた俺は、あの時のドアの音の事を思い出した。



やはり誰かに見られていたんだ。



その犯人は、美咲だったんだ──……
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