飛べない鳥
本当は気付いていたんだ。


俺の前から去っていく美咲の背中が、少しだけ震えていたという事。



美咲は大人だから、強がってしまうんだ。


でもそんな美咲を俺は抱きしめてあげられない。



俺には特別な人間がいるから。


俺は美咲がいなくなったマンションの通路を、ずっと眺めていた。



俺は罪な人間だ──……



部屋に戻り、
携帯を見ると響からメールが届いていた。



《どうかしたか?大事な用なら仕方ねぇけど、また今度な?和馬と淳にも言っておくから》



俺はその返事を返さず、
携帯を閉じた。



一人になった俺は、
必ずこの青空の写真を眺めてしまう。



そしてこの写真の世界に入っていくんだ。


この青空を、自分の翼で飛ぶんだ。


だが、すぐに現実の世界へと戻されてしまう。


やはり、この世界は難しい…


前よりは好きになったが、まだ…人間を信じられない…

人間を拒否してしまう自分がいる─……



なぁ、誰か助けてくれよ…
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