飛べない鳥
今日は比較的暖かい日だ。

時々吹く、生暖かい風も心地好く感じる。


俺はいつもより少し早めに屋上に着いた。


屋上にはまだ唯の姿はなかった。



俺はフェンス越しから下を見る。


たくさんの生徒達が校舎に向かって歩いてくる。



その生徒達がすごく小さく見え、まるでおもちゃみたいだった。


俺がこうして外を眺めていると、屋上のドアが開いた。



『遥斗??』



もう振り返らなくても君の声で君が誰なのか分かるよ。



『唯?』


君は、俺の隣まで歩いてきて、俺と一緒に外を眺めた。



『おはよ』


『うん…』



唯は、俺をじっと見てくる。


俺も唯をじっと見つめたが、唯の綺麗な瞳に吸い込まれそうだったので、途中で視線を変えた。



俺は気になってしょうがなかった。



唯がなぜ雨が嫌いなのか─……
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