飛べない鳥
『何で…雨が嫌い?』


俺は乾いている地面に座り、唯を見上げた。


唯は少し戸惑った顔を見せたが、すぐにその顔は消え、いつもの笑顔になった。



『雨の日にお母さんがいなくなったの…』



『え…』



唯の体がゆっくり下がってゆき、俺と同じくらいの目線にきたところで動きが止まった。



『私が4歳ぐらいの時にね、離婚したの…その後ね?すぐにお父さんは再婚して…今は新しいお母さんいるんだけど…』



毛先を触りながら、悲しい顔を見せずに話していく唯。


だけど俺は知っていた。

唯が泣くのを我慢しているということに。



でも俺は黙って唯の話を聞くことしか出来ない。


俺は唯の彼氏でもなんでもないから、唯を抱きしめてもいい権利などない。



『唯?』



『お父さん…ね?お母さんがいるのに、違う女の人と会ったり…してたの…』



ついに、唯の目から、
涙が溢れてしまった…
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