飛べない鳥
俺はその涙を受け止めることが出来ず、ただ悲しく見届けることしか出来ない。

唯の綺麗な涙は、地面に落ち、消えていった─…



『私…そんなお父さんが許せなくて…お母さんが可哀想って思った。お母さんを好きでいられないなら、結婚なんてしなければ良かったのにって…小さい頃思ってた…』



『…うん』



『だから…私は人間が好きじゃない…でも今のお母さんは私に優しいの…今、とても幸せ…』



俺は頷くことが精一杯で、唯に何も言葉をあげれなかった。



唯は俺と同じ人間なんだ、
ようやくこの意味が分かったよ。


もっと早く聞いてあげれば良かったかな…


そしたらもっと早く唯に一歩近付けたかな─…



『唯と俺似てるんだな…
でも唯は俺より人間嫌いじゃねぇよ…』



『遥斗…』



唯は自分の頬を流れた涙を手で拭いた。


俺は唯を安心させるため、笑顔を見せた。
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