飛べない鳥
まるで珍しいモノを見るような目で、通行人が葵を見ていく。


振り返って見るのは、
女子生徒だけだが、
それが何だか腹が立った。


葵の勝ち誇ったような笑顔が、俺の心をぐしゃぐしゃにしていく。



『…話って何だよ?』



俺は低い声で、葵に聞いた。



もうすぐ梅雨の季節になるのか、湿った空気、風が、俺と葵の間を通り抜けていく。



葵のさらさらな黒髪が揺れる。


葵の透き通った瞳を見ると、俺の体が金縛りにあう。



『ここでは言えねぇよ?ついて来いよ』



『…ありえねぇ』


俺は仕方なく葵の後をついていくことにした。



『ちょっ…遥斗?』



『…悪いな、先に帰ってくれ』



俺は響に別れを告げ、
学校を出て行った。



ゴロゴロと、空が唸っている。



俺と葵に、
雷が落ちそうだ──…
< 180 / 354 >

この作品をシェア

pagetop