飛べない鳥
俺はスローペースで歩き、マンションに向かう。


足を引きずり、
雨で重たくなった体を動かし、歩いていく。



頭の中に、葵が言った言葉がぐるぐると駆け巡っている。



その言葉を消したくて、目を瞑るが、消えてはくれなかった。



『だせぇよな、俺』



俺は上のボタンを押し、
エレベーターが下りてくるのを待った。



ぽたぽたと髪の毛の先から雫が溢れて、マンションのタイルに染み込んでいく。


俺はエレベーターに乗り込み、6階を目指す。


そして6階に着き、自分の部屋へとさっきと同じペースで歩いていく。



俺の部屋の前に誰かが座りこんでいた。



『…誰?』



『遥斗…』


その人は立ち上がり、
俺を真っ直ぐ見た。



『美咲…』



俺は誰かに癒して欲しかったんだ。


誰かに助けて欲しかったんだ。



俺は美咲に最低なことをした。



気が付いた時には、
もう遅かった──……



唯…俺は君が好きなのに…


………伝えられない…
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