飛べない鳥
葵が言っていたな、

唯は運命の人を信じているって。


唯の運命の人は、葵だったんだ…



おめでとう、唯…



『俺、唯を忘れられないと思う』



『無理して忘れなくていいと思う…ゆっくりでいいだろ、な?』



響は俺に傘を差し出してきて、俺の手に持たせた。


俺は傘を握り、
立ち上がった。



『俺さ少しは変わったかな?』



俺はさっきまでの暗い、沈んだ顔を笑顔に変えた。



『今の遥斗が一番かっこいい!』



『帰るぞっ響!!』



俺と響は雨の中、
笑いながら走って行った。


今の俺は笑うことしか出来ない。



大声を出して、笑う。


他の人の場合、失恋したら泣き叫ぶのだろう。



でも俺は涙がない。



だから、笑うんだ。


笑っていると、
少しだけ楽になれるから。
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