飛べない鳥
でも一人になると、
悲しい顔になってしまう。

一人になると、
葵の勝ち誇った顔が浮かぶ。



『…うぜぇ』



こんな小さな愚痴を吐いても、葵には聞こえるはずはないのに…


それでも言ってしまう。


部屋に飾ってある青空の写真は、今の空と真逆の空。


…もし明日晴れたら、
最後に、あの場所に行ってもいいかな?


これで最後にするから─…


明日晴れたら、もう一度だけ、あの屋上に…



君の笑顔を見に行ってもいいかな?




──……朝、目が覚めると、カーテンの隙間から明るい陽射しが射し込んでいた。



俺は勢いよく体を起こし、カーテンを全開にした。


すると、そこに広がる景色は、俺が望んでいた景色だった。



『晴れた…』



昨日、あんなにも大雨だった天気が、一日で快晴となった。



神様が、俺にくれた最後のプレゼントなのかもしれない。
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