飛べない鳥
俺は杏に感謝しなければならない。

杏に出会わなければ、自分の気持ちなど分からなかった。


お礼を言うよ…ありがとう。


俺は杏が走って行った廊下の先を暫く見つめ、自分の教室に戻って行った。


でも俺はあることを思い出し、方向を変えた。


いるかな、唯…

もう行ってもいいよね?



俺はゆっくりとドアを開ける。



─…キィー……


相変わらずのドアの錆びた音。


そしてそのドアを開ければ──……ほらね?



『遥斗…おはよう』



『うん…』



君の姿が見える。



大好きな君の笑顔が─…


『唯、俺さ…決着つけたよ』



『うん?』



『俺、お前が─…』



俺が唯に気持ちを伝えようとした時、屋上のドアが思いきり開いた。



『遥斗!!!』


勢いよく飛び出してきたのは響だ。



『どうした!?』


響は慌てて俺に携帯を差し出してきた。


俺は訳も分からず、
携帯を受けとり、画面を見た。



『美幸から…』







《響君、もう終わりにしましょう…》
< 280 / 354 >

この作品をシェア

pagetop