飛べない鳥
取り残された俺は、
ため息を溢し、響と唯がいる屋上に戻っていった。



響に何て伝えればいいんだ?


なんて言葉をかけたらいいんだ?


俺は唇を噛み締め、屋上に繋がるドアの前で考えた。


『よし…』



そして勇気を出し、屋上のドアを開けた。



屋上にはまだ泣いている響と、響の頭を撫でている唯がいた。



『遥斗…』



『うん…』



俺は響の横に座り、響の肩を抱き寄せた。



響のすすり泣く音が、俺の胸を痛くした。



『なぁ、響?昔俺の母さんが言ってたんだけどな?』


響は涙を手で拭き、俺を見た。



『うん…』




『泣くときはこの綺麗な空を見上げるとなにかご褒美がもらえるんだってさ。だから空を見上げて泣けよ…』



響は俺の言った通り、空を見上げた。




『…すげぇ…綺麗…』




響が何故《綺麗》と言ったのか俺には分からないが、きっと…世界が輝いて見えたんだな…



響?泣き止んだら、どうだったか俺に教えてくれよな─…
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