飛べない鳥
──…小さい頃施設の先生に聞かれた。



『遥斗君の夢は何かな?』

俺はクレヨンで絵を描いていた。


下手だけど一生懸命描いていた。


『僕は…これになりたい…』



先生は画用紙を覗く。


俺は、画用紙1面に鳥の絵を描いていた。



『…これは…鳥さんかな…?』



俺は先生の顔を見た。


先生の目が潤っていたんだ。


『そうだよ、僕は鳥さんになりたいんだ。
そしたらパパにもママにも会えるでしょ?』


この時の俺は無邪気だった。


大人が言う事は全て信じていた。



鳥になんかなれるもんか。

でも、今でも翼が欲しいと思ってしまう。



こんなつまらない世界に生きていたって、俺は何も出来ない。


つまらない人生を送るだろう。



俺はゆっくり目を閉じた。

このまま…消えれたらいいのに…
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