愚者
「そうなの?」
「波長が合わないんだよ。無理して合わせる積もりも無いしね」
 葵は小夜子の強気なスタイルに心底感心する。中途半端な立ち回りでは只の変人扱いを受け、自然とイジメめの対象に成る事は十二分に有るが、小夜子が取っているスタンスは容認されている。触れ難い雰囲気とスタンスが齎す結果では有ろうが、その態度に葵は感動すら覚えた。不思議な存在だ。教室内でも一人ポツンと浮いているが、その浮いた存在自体が一つの絵に成っている。小夜子のパクパクとパンを食べる姿は普通の少女なのだがナニかが違う。葵は小夜子の事を考えて見とれていると、小夜子が「どうしたんだい?」と尋ねて来る。
「えっ?何でも無いよ」
 葵は少しだけ顔が紅潮するのを感じ乍弁当を食べる。自分で作った弁当の中身は味付けも含めて初めから分かっている。その所為だけとは云わないが、味気無い気がして仕方が無い。だが、一人で教室の机で食べる食事よりは遥かに美味しく感じるのは孤独感が無いからだ。風が吹き抜ける中、二人は楽しい時間を過ごし昼食をしている間に、昼食時間の終了を知らせるベルの音が拡声器から無情にも鳴り響き、ベルの音を切欠に二人は屋上を後にした。

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