愚者
 終礼の時間。担任が机の上で今朝行なわれた抜き打ちテストの答案用紙を名前の順で返している。葵は自分の番が来るのをドキドキし乍待っている。正直な所結果を知る事が怖い。
「笠原葵」
 自分の名前を呼ばれて葵は教壇の前に歩いて行く。担任が不思議と意味有りげな笑みを浮かべ、葵は背筋が凍る感じを受け硬直する。
「転入したてだと云っても、確りと勉強をしないと駄目だぞ。そんなんじゃ、落ち毀れになるだけだ」
「えっ?」
「手を抜いて授業を聞くなって云ってるんだ」
 葵は顔面が紅潮するのが分かる。何故自分だけが非難を受けているのだろうか。理不尽な扱いに眼の前が歪んで行くのが分かる。教室の生徒全員が笑っている様に思えて来る。 
葵が立ち竦んでいると、一人の男子生徒が立ち上がり「早くして下さい」と笑みを浮かべて葵を無視するかの様な発言で先を促す。無視をされる事は慣れているが、教師から理不尽な叱責を受けた事は無い。葵は何が起きたのか理解する事が出来ず立ち竦んで居ると、小夜子の大きな咳払いが聞こえ続け様に話し出す。
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