愚者
明るく振舞うかと思うと、不意に寂しい笑顔に成ったりとする。所謂気紛れと云う部類に属するのかも知れないが、只一つはっきりしている事は、心の奥底を決して見せ様としない。表面的な受け答えは年の功と云う意味だけでは無いが確かに巧みだ。だが、その巧みさが南條を苦しめている様にも見える。私と南條とのスタンスは分かり易く、南條が月の売上を取りに来る事以外には、一切この店に対して口出しをしない。経営自体に興味が無いと云うよりは、隠居したいと云う思いの方が強かったのだろう。私からすれば願ったり叶ったりの条件だった。この店から少し離れた所に「マンション南條」と云う賃貸マンションを所有し、管理人室兼自宅に大半は引き篭もっている。全く持って謎だが、以前店舗でTVを見ている際に、番組が取上げる「ネット依存」と云う番組を流していると、突然スイッチが入ったかの様に自説を熱く語り出し、番組のコメンテーター以上の発言を披露した事がある。恐らく私等が苦手なパソコンやITを趣味としているのだろうが、南條の来歴の謎を更に深める要因に成って要るのは確かだ。