愚者
私は黙々とテーブルをダスターで拭き開店の準備をする。草臥れた感じのする店を好んで来る客が居るのが不思議に思うが、そのお陰で私の生活は成立して要る事を思うと本当に有り難い。私は店の有線を捻り薄いジャズを流す。只の気紛れだ。そうして準備をしていると、入り口に一人の男が立ち店内を覗いている。私は軽く会釈をしてその客を招き入れる。
「開いているのか?」
「今、準備をしている所ですが、構いませんよ。お好きな席にお坐り下さい」
 身長は170cm前後だろうか、だが、横幅に矢鱈とでかい。太っていると云うよりはガタイが良いと表した方がピッタリと当て嵌まる。
「ホット珈琲を貰おう。それと、簡単なサンドウィッチだ」
 絡み難い態度で注文して来る。この態度だけを見れば、ヤクザかチンピラとも思えるが、着ているスーツの着こなしと物腰からは違う職種とも取れる。どの道面倒事は御免だ。 
 私は男の注文を受け手際良く珈琲を入れる準備をし乍、サンドイッチを作る。ガスコンロで思い切り熱したフライパンの中に、油を入れずにその侭ベーコンを放り込み炒める。数分程炒めている間に、トーストをオーブンで焼き、パンの耳を切り落とし、フライパンの中のベーコンから出た油を捨てカリカリに成る迄ベーコンを炒める。こうする事で絶妙な焼き具合に成る。
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