愚者
有無を云わせぬ口調で葵に誘いの声を掛けて来る。
「そう云えば、君の事を何て呼んだら良いかな?」
「……笠原葵です」
「うん。苗字だと他人行儀で嫌だから、葵君と呼ばせて貰うよ」
「えっ?」
「ほら、何をしてるんだい。帰ろうじゃないか」
 小夜子は、強引とも思える勢いで葵の背中を押して教室を出ようと笑顔で話し掛けて来る。
「その……」
「葵君の家は何処だい?」
「えっ?」
「折角同じクラスに成ったんじゃないか。楽しい学園生活を送らないと勿体無いだけだぞ」
 葵は小夜子の勢いに負け自宅の住所を告げると、小夜子は「僕の家の近所じゃないか」と快活に答え、手を繋いで歩き出す。
「葵君。今日は時間に余裕はあるのかい?」
「あ、はい。大丈夫です」
「そうか。それなら、僕は君の事を色々と知りたいから、ゆっくり話そうじゃないか」
「どうして?」 
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