愚者
「そうなんだ」
微妙な空気が流れる。葵は如何云った態度をしたら良いのか分からずにいると、小夜子は「もっと気楽になりなよ」と砕けた話し方を求めて来る。
「四六時中暗い顔しているのは勿体無いよ。折角の可愛い顔が台無しだ」
「……そんな事は」
葵の心に滑り込む様な砕けた話し方をしてくる小夜子に、葵は徐々に慣れ始めていた。裏表の無い性格なのかも知れない。小夜子の話術が巧みなのか、葵は自然と自分の生い立ちを話し出していた。両親の離婚やイジメ等、本来は話し難い筈の内容だが、自然と言葉が溢れ出す。自分の心の弱さ。現状を変える事の出来無い不甲斐無さ。本来なら人に聞かせる内容では無い筈なのに、小夜子には不思議な魅力が有るのか、葵は心の澱が消え去るのを感じ乍も、思いの全てを打ち明けていた。
「逃げる事が正しいとは思わないけれど……」
「葵君」
「えっ?」
「君は弱くなんてないさ」
「でも……」
「人の心の弱さが分かるからこそ、我慢したり出来るんだ。それは弱さじゃなくて強さだ」
葵の瞳から自然と涙が溢れ出す。今迄こんな事を云ってくれた人に会った事が無いからだ。人間の心は弱く儚い物だと小夜子は優しく語り掛けて来る。その言葉の数だけ、葵の心に広がる闇の部分が薄れて行く。
微妙な空気が流れる。葵は如何云った態度をしたら良いのか分からずにいると、小夜子は「もっと気楽になりなよ」と砕けた話し方を求めて来る。
「四六時中暗い顔しているのは勿体無いよ。折角の可愛い顔が台無しだ」
「……そんな事は」
葵の心に滑り込む様な砕けた話し方をしてくる小夜子に、葵は徐々に慣れ始めていた。裏表の無い性格なのかも知れない。小夜子の話術が巧みなのか、葵は自然と自分の生い立ちを話し出していた。両親の離婚やイジメ等、本来は話し難い筈の内容だが、自然と言葉が溢れ出す。自分の心の弱さ。現状を変える事の出来無い不甲斐無さ。本来なら人に聞かせる内容では無い筈なのに、小夜子には不思議な魅力が有るのか、葵は心の澱が消え去るのを感じ乍も、思いの全てを打ち明けていた。
「逃げる事が正しいとは思わないけれど……」
「葵君」
「えっ?」
「君は弱くなんてないさ」
「でも……」
「人の心の弱さが分かるからこそ、我慢したり出来るんだ。それは弱さじゃなくて強さだ」
葵の瞳から自然と涙が溢れ出す。今迄こんな事を云ってくれた人に会った事が無いからだ。人間の心は弱く儚い物だと小夜子は優しく語り掛けて来る。その言葉の数だけ、葵の心に広がる闇の部分が薄れて行く。