愛してるのに愛せない
しばらく沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは兄貴。
「なるほどね…それで二人は親友ってことか」
兄貴がそう言って、話を続けた。
「まぁ…海斗も良い友達を持ったし、彩ちゃんと大輝君も良い友達を持ったってことだな」
兄貴が微笑み、俺たち三人は顔を見合わせて笑い合った。
「あっ……お兄さんの名前って、なんて言うんですか?」
彩が兄貴に名前を聞こうとする。
確かに俺は、彩と大輝には「兄貴」としか教えてない。
「ん?俺の名前?俺は光太。光という字に太いって字で、『こうた』だよ」
「光太さんですか…。あのっ…なんで、この家には光太さんと海斗しか居ないんですか…?」
今度は大輝が兄貴に質問した。
俺も兄貴には教えてもらったことはない…
「そういえば兄貴って両親の話、全くしないよな…」
俺が兄貴に聞くと、兄貴は真剣な表情で俺を見て…彩と大輝を見て……黙った。
俺は……いや、俺たちは息を呑む…
「お兄さんが、何故二人だけなのか話したくなかったら、聞きません…」
彩がそう言うと、兄貴は再び俺を見た…