愛してるのに愛せない


沈黙が流れ続けるかと思ったところで大輝が口を開く。




「例え海斗が記憶喪失でも……俺たちは変わらないさ…」


大輝が俺の肩を軽く叩く。



大輝…違うんだ…

お前たちのことを考えてるんじゃない……その言葉は嬉しいけど…違うんだよ…




「しんみりしちゃったね……みんな、気分転換に風呂でも入りな?」



兄貴が気を遣って、話題を変え、俺たちの気分も変えようとしてくれた。




「はーいっ♪」


彩が手を挙げて、元気良く返事をした。

きっと彩も気を遣って空気を変えようとしたんだろう…



「あっ、それと…彩ちゃんと大輝君。俺のことは気軽に光太さんって呼んでいいよ!」


「じゃあ、あたしも彩で良いですよっ!」

「じゃあ俺も大輝でっ!」


みんなが笑って言い合っている中、俺は黙っていた…


会話は全て、耳から耳へ通り過ぎていくようだった…
< 84 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop