PRAY MACENARY
「ん?」

と、弥羽は視線を一度ソレに向けると、恭しく丁寧な手付きで佐良に見えるように向きを変えた。

「ああ。」

それを見た佐良は静かに頷いた。

ソレは先ほど弥羽が祈りを捧げていた女性を象った像である。

「意外に信心深いんだ。」

佐良がそう言った視線の先にある像は「ゼロの像」と呼ばれている。

正確にソレがいつから存在するのかは分からないが、クローンが存在した時には既に存在していた。

ソレのモデルとなった少女はクローンが生まれる前に存在し、自ら後の世に生まれてくるクローンのために生を捨てた。

人為的に生まれるクローンの中で唯一、自然発生した、人為によらず生まれたクローン。


少女はクローンの神といわれている。

いつから存在したか、その少女はどこに生きていたのか、その全てが分からない故に名前も分からない。

ただ、その少女が存在し、クローンの神となったということしか伝わっていない。

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