愛恋
まぁ、正確には座って来ようとしたんだけど…
「はいストーップ」
「何だよサトル~」
大輔さんの顔の前にもう1人の男の子の右腕が出てきて、止められた。
「いや、何か嫌がってないかなって?ね?」
冗談っぽく笑いながら、あたしを見て目配せするサトルって人。
「さすがに、隣はちょっと、初対面だし」
上手く、かわせたっぽい。
本気でチャライのうざったい…。
あたしは工場の並ぶ海側を見ながら、今日の夜ごはん何かな?
とか隣には反抗期を迎える頃の男2人が立っているのに、変に冷静にそんな事を考えていた。
そして、あたしがバスを降りる時には「じゃーね~」と2人に手を振られて帰るまで一言も言葉を交わすことはなかった。