アリィ
目立つこと、人と違うことは、悪だと思っていた。
でも、私を見た瞬間にみんなおののいて道を開ける、この快感。
カナエ達があれだけ偉そうにしている理由が分かった。
人は見た目をおおいに重視して、その者への態度を変える。
こんな扱いを受けていれば、勘違いしてしまうのもうなずけた。
いつもの通学路には、海が割れる神話のように、私のための道が拓けていく。
みんな私を遠巻きに見ている。
今までの、差別的な、排除的な目じゃない。
私という存在に驚き畏怖する目だ。
もう私は人の目を気にして地味に徹しようとしてできなかった中途半端なはみ出し者じゃない。
守りたい者のために、闘うために、あえて歌舞伎者を演じる勇者だ。
正門が見えてきた。
あの先には、五十嵐先生が立っている。
これまではその屈強な体で子供を威嚇できてきただろうけれど、残念ながら私はそう簡単に屈しない。
それどころか利用してやろうと思われているなんて、想像すらしていないだろう。
門をくぐる。
いよいよ時計台の下に、腕組みをして立っている五十嵐先生を認めた。
さあ、来い。
何とでも言え。
そして私を捕まえるんだ!