まーくんの部屋



正常な意識を保つために、私は少しずつでも場所を移動した。

日が落ちて、ゆっくりと暗闇と明かりを行ったり来たりして

いつしか眠くなり、そして寒さで目が覚める。




すると張り詰めた空気の中、スーツ姿の男女が少しずつ駅からこぼれおちてきて

それで私は朝が来たんだと気づく。





朝と夜をそういう風に数え、

自分は日に1食しか食べないようになっていると気づいた。




そして、袖をまくり腕を見てみる。



辺りは暗かったけど、

近くのオフィスビルからの光でぼうっと見えた。

確かに痩せたかもしれない。




その時、過去の遠い地の、あの子の顔が浮かんできた。




これであの子みたいに細くなれるかも…





そう考えてハッとした。





いまだにそんなことを考えている自分が、恐ろしく愚かに思えた。

すると自然と口から笑いの息が漏れた。





私、このまま死ぬのかな…






今日になって、残金を見るともう80円しかなかった。

それでも、ここに来たことは後悔していない。



ああ、私 死ぬんだ…







「大丈夫?」


そう考えていると、突然声がした。

頭を上げると、目の前には男がいた。



いや、正確に言うと、男「達」が。





< 10 / 74 >

この作品をシェア

pagetop