まーくんの部屋



履歴書というものを今まで書いたことがなかったけど、

改めて見て私は驚いた。

こんなに優しい店長さんだけど、

私はここで働くことも叶わないと思った。




履歴書、私には書くところが無い。




名前、学歴・職歴

私はこれら全てをすてるためにここに来た。


現住所

無い。


連絡先、電話番号も無い。




私は店長さんに深く頭を下げて、そのお店を出た。









もう終わりだ。






駅から少し離れたところで、建物に寄り掛かる。


息で手を温めながら、

そう考えた。



フリマで買った、カーキのモッズコート。

これを買ってよかった。

これはすごくあったかい。



そのモッズコートと、グラデーションのかかったVネックのニット。

あとは濃い色のジーンズで、靴は履いてきたスニーカー。

せっかく買ったのに、無意味だったのかな…

そのまま建物に寄り添って、ずるずると座り込んだ。



朝から何も食べてない。

お金はなかったけど、痛くなるほどお腹が空いたから、

買うしかなかった。






それから私は、道端で生活し始めた。





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