まーくんの部屋
夜は食べ物をむさぼれても、
昼前には部屋を追い出される。
体の中に一生懸命ストックしていても、
夜になるとやっぱりお腹がすいてくる。
どんなにため込んだと思っても、
半日で消化してしまうということに、経験的に気付いた。
それに、毎日食べ物をくれる男が見つかるわけじゃない。
そういう夜は…
必死で耐えるしかないんだ。
何日も同じ場所にいて歩き回っていたら、何となく地理がつかめてきた。
駅の近くに、細くて暗い道を見つけた。
雨が降っても大丈夫だし、人通りが多くて男が見つかるし
多分この辺りでここが一番いい。
なんて考えていたら、他人に思考を邪魔された。
多分男。
私の手を取って、指を絡ませた。
そしてバカみたいな笑い声で、もう一人に何かを言っている。
昨日は男が見つからず、食べてなくて私はとても疲れていた。
だから私が下を向いたままでいると、怒って私の体を壁にぶつけた。
痛みも感じたような、感じなかったような。
今日も食べられなかったら困るから、
顔を上げて何となく笑ってみた。
すると、
また前に見た
スーツの男が通り過ぎるのが見えた。
そしてまた、目が合った。
知らない男に手を掴まれたままに、
私はそのスーツの男と反対方向へ進んで行った。
そして連れられながら、少し振り向いてみた。
その長身の男も、振り向いていた。
作ったままの笑顔で、もう一回、笑ってみた。