まーくんの部屋
リュックの中身を全て売り、リュックそのものも売って、
何とかまとまったお金になった。
そのお金でやっと普通の服が買えて、
夕方には1日苦労したその中庭を出た。
これでやっとバイトができる…
そう思って、まだ頭の片隅にあった、
ファミレスで見た求人雑誌に載っている、昨日行ったのと違う飲食系店を目指した。
そのお店はファミレスと違って小さくて、
店員さんも店長さんも優しそうな人だった。
私が予約の電話を入れなかったことも、顔はしかめていたけれど、
許してくれたようだ。
「じゃあ、履歴書見せて」
奥に通されて、そう言われたけど、もちろん見せるものなんかなかった。
「え?もしかして履歴書も持って来てないの?」
「…。」
もうだめだと思った。
「すみません…」
私はうつむくしかなかった。
「もー…
しょうがないな」
その声に私はびっくりして、目をまん丸にしてその人を見上げた。
四十代くらいのその男の人は多分店長さんで、
ぶつぶつ言いながらも奥から新品の履歴書を持ってきた。
ものすごく…
優しい人なんだな…
「すみません…」
困ったような笑顔を、奥さんらしい女の人と向け合っている。
この人なら、雇ってくれるかもしれない。
期待で体が飛び跳ねそうだったけど、
落ち着け、と自分に言い聞かせて
ドキドキしながらペンを取った。