せーしゅん。【短編集Ⅲ】
池田はペッと唾を吐いてベンチから立ち上がった。
「ほらっ、あんたも。」
女は俺を睨んだ。
俺は「すいません」と呟きベンチから離れた。
女はベンチの下のゴミをブラシみたいなホウキで掃き始めた。
「あんなオバァに謝る必要はねぇーぞ。」
えっ!?と池田を見てしまった。
池田はあの女がおばさんに見えたのか。
どう見たって俺たちと10歳も違わない若い女だろう。
まぁ、確かにスッピンで色気も何一つなかったけど…。
後ろを振り向いて女を見ると
前髪を触れて汗を拭いていた。
俺は少しの間
それに見とれていた。
-END-


