Love Step
不意打ちでいきなり去られた峻は唖然となった。


運ばれてきた2つのコーヒー。


その1つを何も入れずに飲む。


やっぱりあのガキンチョ、おかしいぞ。

俺に誘われてあの態度はないだろう。

自分の周りにはいないタイプ……。

いないタイプ……いや、絶対にいないタイプだ。



「おもしれぇ やつ」


峻はニヤッと笑って呟いた。



* * * * * *



ベッドに座り買って来た雑誌を開く。


今まで興味の持てなかったものに興味が湧いている。


洋服だとか、バッグ、小物、可愛いヒール。


わたし変わったよね。


あ、あの人だ……。


ページをめくっていると峻と彩の姿に手が止まる。


カッコいいのは認める。

突然出てきちゃって悪いことしちゃったかな……。

コーヒーも頼んじゃっていたし。

ケガも気にしてくれていたみたいだった。



~~~♪


手元に置かれていた携帯電話が鳴った。


雪哉の着信メロディーに雑誌を放り投げて急いで出る。


「もしもし?」


『どうして帰ったの?』


「あ……めぐみさんに伝えてもらうように言ったんだけど……」


少し不機嫌そうな雪哉の声に杏梨は口ごもってしまう。


『それは聞いた』


「なんか……怒ってる?」


『すごく怒っているよ』


本当に怒っているのかいつもより低く聞こえる。


「ええっ?」


怒っていると言われて焦ってしまう。


『帰りに食事に行こうと思っていたんだ』


「ご、ごめんなさい でも今日はゆきちゃんの好きな肉じゃがだからねっ?」


機嫌直して欲しいよ~


心の中でそう思いつつ雪哉の反応を待つ。


『肉じゃがか……OK これから帰るよ』


帰ってきた声は機嫌が直っていた。


そんな子供っぽい雪哉がくすぐったい。


電話を切った杏梨はハッとなる。


今、これから帰るって言ってたよね……?

やばっ!まだ何も用意していなかった!


杏梨は急いでキッチンに向かおうとベッドを降りた。



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