空白の玉座
柔らかいウェーブのかかった金髪は腰くらいまでの長さがある。
洋服は破れ、体は汚れているがその存在は檻の中でも目を引く。
少女の近くへとクラリスは歩み寄った。
顔を伏せているせいで顔は見えない。
「おい、顔を上げろ」
格子の隙間から棒を差し入れ、店主が少女の背中を突付く。
何度か突付かれ少女は怯えた顔を渋々と上げた。
少女のアイスブルーの瞳がクラリスを見上げる。
その瞳は冬の冴え冴えとした海を思わせるほど透き通った色をしていた。
「…名前はなんだ?」
不安に揺れる瞳を見下ろしながらクラリスは聞いた。