空白の玉座
王妃親衛隊の訓練場の入口に王妃親衛隊隊長、ゴルドアの姿を見つけてジェイスは剣を腰元の鞘に収める。
訓練をしていた他の者たちもそれに倣うようにして手を止めた。
ゴルドアのもとに整列しながら、ジェイスは宝石のような色の瞳をゴルドアの隣に並ぶ少年に向けた。
大柄なゴルドアの隣にいるせいか小柄な体がさらに小さく見える。
癖のある黒髪は左右に無造作にはね、目じりの下がった大きめの黒い瞳と合わさって、彼の肌を白く見せていた。
「誰だ、あれ」
リークが小声ともつかないような声で呟く。
ジェイスは表情を緩めて、セシだよ、と答えた。
「あ、…それってゴルドア隊長の…」
言いかけたところで、ゴルドアが姿勢を正した。
それを合図に皆が揃った動作で敬礼する。