空白の玉座
王族の居館へ抜ける扉をくくり庭に面した通路をセシと2人で歩いていると、「さっきの人ってさ」とセシが呟いた。
「…男、だよね?」
「あぁ、ロランのことか」
ジェイスは笑いながら言う。
「男だよ。けど心は女らしい、あいつ曰くね」
「…よくわかんない」
「そのうち慣れるよ」
歩きながらしゃべっていると、すれ違う女官や衛兵たちがジェイスに挨拶をしてくる。
都度、笑顔で返すジェイスを見ながら「モテるね」と言った。
「好きな人いないの?」と聞くと、お前は?と逆に返された。
「女に興味ない」
「そんなこと言ってると男に言い寄られるぞ」
少し先を行くジェイスの、後姿を睨みながらセシは後を追った。
上手い事はぐらかされた。
心の中でそう思った。