空白の玉座
「何の騒ぎだ」
クラリスは部屋の真ん中に立つノインを鋭い眼光で睨んだ。
「隣の部屋に誰かいるのかい?」
「留守中に部屋に入るなと申し上げたはずだ」
鋭い眼差しを嘲笑うようにノインは口端を吊り上げた。
隣の部屋へ足を向けたノインに、クラリスは腰元の剣を抜くとすばやくノインの首筋に押し当てた。
「出口はあっちだ」
「お前…母に向かって何を…」
「ゲイツ、ノイン様をお連れしろ」
言葉とともに傍に控えていたゲイツがノインの腕を掴む。
連れていかれるノインを横目で見ながらクラリスは寝室の扉を開けた。
ドア陰に隠れていたルシアはビクッと体を震わせる。
「そんなとこで何をしている」
「こ、声が聞こえたから…」
そう言うと特にそれ以上は言われる事なく、クラリスは湯殿へと続く奥の扉を開け入っていく。
ルシアは姿が消えるのを待ってホッと肩の力を抜いた。